直接請求
直接請求制度の意義
現行の地方自治制度は、住民から選挙によって選ばれた代表者により行政が行われる間接民主制度が原則となっています。
しかし、その運営が住民の意思に反して行われようとした場合などに、住民が意思を示す手段として、直接請求制度が認められています。
直接請求の種類
主な直接請求の種類は、下表のとおりです。
これらの直接請求は、市議会の議員及び市長の選挙権を有する者が一定の連署をもって、その代表者が請求するものです。
直接請求の種類 | 必要署名数 | 請求先 |
---|---|---|
条例の制定又は改廃の請求 | 選挙権を有する者の50分の1以上 | 市長 |
事務の執行に関する監査の請求 | 選挙権を有する者の50分の1以上 | 監査委員 |
議会の解散請求 | 選挙権を有する者の3分の1以上 | 選挙管理委員会 |
議会の議員及び長の解職請求 | 選挙権を有する者の3分の1以上 | 選挙管理委員会 |
主要公務員の解職請求 (副市長・選挙管理委員・監査委員・教育委員会の教育長又は委員) | 選挙権を有する者の3分の1以上 | 市長 |
市町村合併協議会設置の請求 | 選挙権を有する者の50分の1以上 | 市長 |
市町村合併協議会設置協議について選挙人の投票に付する請求 | 選挙権を有する者の6分の1以上 | 選挙管理委員会 |
選挙管理委員会の役割
直接請求に必要な署名数は、選挙管理委員会が告示する選挙人名簿の登録者数により決まります。
また、直接請求に係る署名簿に記載された署名の有効・無効を審査・決定し、その結果を証明・告示したり、解散や解職の賛否投票の実施などの事務も選挙管理委員会が行います。
署名収集の禁止期間
衆議院議員・参議院議員・地方公共団体の議会議員や長の各選挙が行われるとき、当該選挙が行われる区域内では、一定の期間、署名の収集を行うことが禁止されます。
選挙種別 | 禁止期間 |
---|---|
任期満了による選挙 | 任期満了の日(統一地方選挙の場合は選挙期日)前60日に当たる日から選挙期日まで |
衆議院の解散による総選挙 | 解散の日の翌日から選挙期日まで |
市町村の設置による議会議員又は長の選挙 | 市町村が設置された日から選挙期日まで |
その他の選挙(補欠選挙、再選挙など) | 選挙管理委員会が署名を求めることができなくなる旨の告示をした日の翌日から選挙期日まで |
無投票当選の場合は、無投票の告示がされた日以後は、署名収集の禁止が解除されます。
直接請求の手続
条例制定(改廃)請求
【地方自治法第12条第1項、第74条~第74条の4】
選挙権のある市民の1/50以上の連署をもって、その代表者が市長に条例の制定・廃止・改正の請求をすると、市長は20日以内に議会を招集し、意見を付けてこれを議会に諮ります。
手続の流れ
- 請求代表者証明書の交付申請
請求代表者は、請求の要旨など必要な事項を記載した請求書を添え、市長に対し、文書で請求代表者証明書の交付を申請します。 - 請求代表者の資格確認及び請求代表者証明書の交付
市長は、直ちに選挙管理委員会に対し、請求代表者が選挙人名簿に登録されている者か確認し、登録されている場合は、請求代表者に証明書を交付し、その旨を告示します。 - 署名の収集
請求代表者は、請求署名簿に1の請求書と2の請求代表者証明書(両方とも写しで可)を添付して、市議会の議員及び市長の選挙権を有する者に対し、署名押印を求めます。署名の収集期間は、1箇月以内です。 請求代表者は、自ら署名を収集するほか、選挙権を有する者に対して委任して署名の収集をさせることもできます。この場合に受任者は、上記の書類のほか、委任状を付した署名簿を用いなければなりません。 - 署名簿の提出
請求代表者は、署名簿を選挙管理委員会に提出して、署名押印した者が選挙人名簿に登録されている者であることの証明を求めます。 署名簿の提出は、署名収集期間の満了の日の翌日から、5日以内です。 - 署名簿の審査
選挙管理委員会は、署名簿を受理したときは、その日から20日以内に署名の有効・無効を決定し、署名押印した者の総数及び有効署名総数を告示します。 - 署名簿の縦覧
選挙管理委員会は、署名簿の証明が終了した翌日から7日間、指定した場所において、署名簿を関係人の縦覧に供します。署名に関し異議がある人は、縦覧期間中に異議の申出をすることができます。 選挙管理委員会は、異議の申出を受けたときは、その日から14日以内にこれを決定し、修正、通知などの措置をします。 - 署名簿の返付
選挙管理委員会は、異議の申出がないとき又は全ての異議を決定したときは、有効署名数を告示し、署名簿を請求代表者に返付します。 返付の際には、署名簿の末尾に署名押印した者の総数、有効署名数及び無効署名数を記載します。 - 本請求及び受理
本請求は、署名簿の返付を受けた日又はその効力が確定した日から、5日以内に、請求書に必要数以上の有効署名があることを証明する書面及び署名簿を添えて、市長に対し請求します。 市長は、署名簿の署名数が法定署名数以上か、請求が期間内に提出されたかを審査し、受理するか否かを決定します。受理したときは、その旨を請求代表者に通知し、告示します。
本請求受理後の措置
市長は、請求を受理した日から20日以内に議会を招集し、意見を付して議会に付議します。
事務監査請求
【地方自治法第12条第2項、第75条】
選挙権のある市民の1/50以上の連署をもって、その代表者が監査委員に、市の事務や教育委員会、選挙管理委員会などの事務について事務監査の請求をすると、監査委員は請求のあったことについて監査します。
なお、この事務監査請求制度は、住民監査請求の制度とは異なります。住民監査請求は連署を必要としません。
手続の流れ
手続の流れは、次に掲げることのほかは、条例制定(改廃)請求の手続と同じです。
- 請求代表者証明書の交付申請は、監査委員に対して行います。
- 請求代表者の資格の照会確認及び証明書の交付は、監査委員が行います。
- 署名収集委任の届出は、監査委員及び選挙管理委員会に届け出ることになります。
- 本請求は、監査委員に対して行います。また、受理決定もその旨の通知、告示も監査委員が行います。
本請求受理後の措置
監査委員は、監査の請求があったときは、直ちに請求に係わる事項につき監査し、その結果を請求代表者に通知し、告示します。
市議会解散請求
【地方自治法第13条第1項、第76条~第79条】
選挙権のある市民の1/3以上の連署をもって、その代表者が選挙管理委員会に議会の解散の請求をすると、選挙管理委員会はこれを有権者の投票に付し、過半数の賛成投票があったときは、議会は解散します。
ただし、議会の解散請求は、当該議会議員の一般選挙又は議会の解散請求に基づく解散の賛否投票が行われた日から1年間は行うことができません
手続の流れ
手続の流れは、次に掲げることのほかは、条例制定(改廃)請求の手続と同じです。
- 請求代表者証明書の交付申請は、監査委員に対して行います。
- 請求代表者の資格の照会確認及び証明書の交付は、監査委員が行います。
- 署名収集委任の届出は、監査委員及び選挙管理委員会に届け出ることになります。
- 本請求は、監査委員に対して行います。また、受理決定もその旨の通知、告示も監査委員が行います。
本請求受理後の措置
選挙管理委員会は、本請求を受理したときは、解散の賛否投票に先立って、20日以内に議会から弁明書を徴し、請求の要旨と併せて、解散投票の投票期日の告示とともに告示し、投票所の入口等に掲示します。
解散の賛否投票は、本請求の受理の告示日から60日以内に、原則として公職選挙法の定める手続によって行います。
議会は、解散の賛否投票において過半数の同意があったときは、解散することになります。
市議会議員・市長解職請求
【地方自治法第13条第2項、第81条~第85条】
選挙権のある市民の1/3以上の連署をもって、その代表者が選挙管理委員会に議員や市長の解職の請求をすると、選挙管理委員会はこれを有権者の投票に付し、過半数の賛成投票があったときは、議員や市長は職を失います。
ただし、この解職請求は、当該議員又は市長の就職の日から1年間(無投票当選の場合を除きます。)及び解職の賛否投票が行われた日から1年間は行うことができません。
手続の流れ
手続の流れは、市議会解散請求と全く同じです。
本請求受理後の措置
解職の賛否投票は、本請求の受理の告示日から60日以内に、原則として公職選挙法の定める手続によって行います。
議会の議員又は市長は、解職の賛否投票において過半数の同意があったときは、職を失うことになります。
主要公務員解職請求
【地方自治法第13条第2項・第3項、第86条~第88条】
【地方教育行政の組織及び運営に関する法律第8条】
選挙権のある市民の1/3以上の連署をもって、その代表者が市長に主要公務員(副市長、選挙管理委員、監査委員、教育委員会の教育長・委員)の解職の請求をすると、市長はこれを議会に諮り、議員の2/3以上が出席し、その3/4以上の同意があったときは、対象となった人はその職を失います。
ただし、この解職請求は、副市長の場合はその就職の日又は解職請求に関する議会の議決の日から1年間、その他の主要公務員の場合はその就職の日又は解職請求に関する議会の議決の日から6箇月間は行うことができません。
手続の流れ
手続の流れは、条例制定(改廃)請求と全く同じです。
本請求受理後の措置
市長は、本請求を受理したときは、これを議会に付議し、その結果を請求代表者及びひ解職請求者である関係者に通知します。
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更新日:2018年12月03日